大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

札幌地方裁判所 昭和57年(わ)1004号 判決 1982年2月01日

本店所在地 札幌市中央区南一三条西一〇丁目一二四八番地

名称

北海道有線テレビ放送株式会社

代表者

代表取締役 大上四郎

本籍 札幌市豊平区豊平二条一三丁目一番地

住居

同市南区真駒内上町一丁目一番一ライオンズマンション真駒内公園八〇二号室

会社役員

大上四郎

昭和一二年九月一三日生

右の者らに対する法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官竹田勝紀、弁護人田村誠一出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人北海道有線テレビ放送株式会社を罰金六〇〇万円に、被告人大上四郎を懲役八月にそれぞれ処する。

被告人大上四郎に対し、この裁判確定の日から三年間、右刑の執行を猶予する。

訴訟費用は、その二分の一ずつを各被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人北海道有線テレビ放送株式会社(以下被告会社という)は、札幌市中央区南一三条西一〇丁目一、二四八番地に本店を置き、有線テレビ放送事業及び電気機器のリース事業等を目的とするもの、被告人大上四郎(以下被告人という)は、同会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括していたものであるが、被告人は被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、有線テレビ放送事業売上げ等の一部を除外して簿外預金を設定する等の方法により所得を秘匿したうえ、

第一  昭和五三年九月八日から昭和五四年二月二八日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二、三〇八万四、〇四九円あったのにかかわらず、昭和五四年四月二三日、札幌市中央区北七条西二五丁目所在の所轄札幌西税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が五九万七、三六二円で、これに対する法人税額が一六万七、一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額八八一万三、六〇〇円と右申告税額との差額八六四万六、五〇〇円を免れ、

第二  昭和五四年三月一日から昭和五五年二月二九日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が六、〇六八万六、一三五円であったのにかかわらず、昭和五五年四月二六日、前記札幌西税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一〇〇万二、一一六円で、これに対する法人税額が二五万〇、五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額二、三三八万六、六〇〇円と右申告税額との差額二、三一三万六、一〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書三通

一  被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書一〇通

一  検察官作成の報告書

一  大蔵事務官作成の調査事績報告書一七通(昭和五六年六月一日付九通、同月二日付三通〔検察官請求証拠等関係カード14、16、20〕、同月三日付五通〔同カード35、36、37、38、39〕)

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書

一  大蔵事務官作成の「けん疑法人所轄税務署の住所」と題する書面

一  登記官作成の登記簿謄本

一  押収してある法人税決議書一綴(昭和五六年押第三四〇号の1)

判示第一の事実について

一  大蔵事務官作成の同月二日付調査事績報告書(同カード24)

判示第二の事実について

一  大蔵事務官作成の同月二日付調査事績報告書(同カード21)

(法令の適用)

被告会社及び被告人の判示各行為は、各事業年度ごとに昭和五六年法律第五四号「脱税に係る罰則の整備等を図るための国税関係法律の一部を改正する法律」による改正前の法人税法一五九条一項(被告会社については、さらに同法一六四条一項)に該当するところ、被告会社については情状により同法一五九条二項を適用し、被告人については所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、被告会社については同法四八条二項により合算した金額の範囲内において罰金六〇〇万円に、被告人については同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で懲役八月にそれぞれ処し、被告人に対し、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予し、訴訟費用については、刑事訴訟法一八一条一項本文により、その二分の一ずつを各被告人に負担させることとする。

(量刑の理由)

本件は、判示のとおり被告人が代表取締役をしている被告会社において、二事業年度に亘り合計三、一七八万円の法人税を逋脱したという事案であり、本件逋脱率は九八パーセント以上に達するもので、逋脱行為は国家の財政的基盤を失なわせ、誠実に納税申告している一般市民の納税意欲を著しく阻害させるものであることを併せ考えると、本件犯行は悪質であり、被告人及び被告会社の刑事責任は相当重いものといわざるをえない。

しかしながら、被告人は本件当時においても本件逋脱所得の一部について将来申告しようとの意図を有していたとみられること、逋脱した法人税及び重加算税などは現在までにすべて納付済であること、被告人には前科前歴なく現在本件犯行を反省していることなど被告会社及び被告人に有利な諸事情も存するので、これらを総合考慮して主文のとおり量刑したものである(求刑、被告会社に対し罰金九〇〇万円、被告人に対し懲役八月)。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 奥田保 裁判官 岡部信也 裁判官 横田信之)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例